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2014年7月30日 (水)

僕がイラストの著作権を譲渡しない理由 4

少し予定を変えて、
 
 著作者人格権不行使契約
 
の話を書く事にした。
 
発注主に著作権が帰属すれば、著作者人格権も発注主のものだ。
 
だが僕はそれを否定する方向で文章を書いている。
著作権の「帰属」ではなく「譲渡」が望ましいと。
 
この場合、当然、著作者人格権はイラストを描いた人に帰属する(残っている)。
 
発注主が、著作財産権を買い取った場合、著作者人格権だけは元のイラストレーターの元に残っていると(法律ではそう定めている)何かと都合の悪い場合もある。
 
著作者人格権には
 
・公表権(これは今回は関係ない)
・同一性保護(勝手に変更しちゃダメ)
・氏名表示権(作者の名前を作品の傍に明記する)
 
買い取った著作物をいろいろな場所で使いたい場合、作者にこれらを主張されると、ほんとうに自由には使えないことになる。
 
だが、日本の法律でそう定められているのだから、発注主はそれを防ぐために、著作者から著作財産権を買い取った時点で
 
 著作者人格権(の権利)を行使しないよう
 
にと約束させるのだ。
 
しかし、それは公正なことなのか?
そんな疑問がわいてくるのは当然のこと。
 
ネットで検索すると、検索結果の上のほうでは
 
 法的に問題はない。
 それがいやならその仕事を引き受けなければいいでしょ
 
と弁護士の皆さんが回答している。
 
でもこれは、例えば、元請けが、下請けに「無理だろうけど安くやってちょうだい、いやならこの仕事を他に回すよ」のと同じことだ。そんな理屈が通る世界を僕は認めたくない。
 
(また別の回答によると、人格権の不行使特約は無効とする学説もあるらしい。)
 
でもそれが現実に通用しているなら、僕らはそれを正しい方向に持って行くためには、
「著作者人格権の権利を行使しないように」という仕事を「引き受けないように」しよう、と言うしか無いのか。
 
いや、そんなことはない。
 
もっといい方法がある。
 
なぜ、「著作者人格権を行使しないようなケース」があるのだろうか?
それは本当に必要なことなのだろうか?
 
発注主は、本当に著作者人格権不行使契約を求めているのか?
いろいろ事細かく契約条項を考えるのが面倒だから、単に前例に従い、採用しているだけではないのか?
 
つづく

僕がイラストの著作権を譲渡しない理由 3

 
前回、「職務著作物」のことを書いた。
しかしそれらのルールや商慣習はあくまで原則論だ。
 
会社と会社員の関係は、両者の間に交わされた「雇用契約書」に従うことになるが、そんな契約書がない場合には、原則に従うことしよう、というわけだ。
例えば、「雇用契約書」に、「会社から給料をもらって、その業務として描いたイラストの著作権も、そのイラストを描いた会社員個人に帰属する」なんてあったら、こっちが優先だ。
 
まあ、そんな契約を交わすことはないだろうけど。
 
しかし、僕が所属する株式会社スタジオぬえは違う。
 
もちろん、特別な取り決めが無い場合は、職務著作物(法人に権利が帰属する)は一般の会社と同じだ。
だが、スタジオぬえの設立趣旨は、
 
「スタジオぬえという会社は、個々のクリエーターの集合体で、通常は個人名(名義)で仕事をし、経理や請求書の発行や税金の処理など、面倒な作業をまとめて代わりに行う」というものだった。
1977年に、スタジオぬえは、早川書房から出版された『宇宙の戦士』(文庫版)のイラストを担当した。そこに登場するパワードスーツ(機動歩兵)は、ぬえの宮武一貴がデザインし、同じくぬえの僕がイラストに仕上げたものだ。
 
いまでもこの『機動歩兵』はプラモやフィギュアとして商品化されている。
 
その著作権使用料は、いったんはぬえの口座に振り込まれるが、その後、宮武、僕、スタジオぬえとで、その著作物への「貢献度」の比率に従って分配される。
僕らは、「職務著作物」よりももっと上位のルール、「著作物の権利は、それを生み出した著作者に帰属する」という考え方を大事にしているからだ。
このような、複数の著作者によって作られ、しかもそれらの創作が複雑に絡み合い、作品の諸権利を明確に分離できない作品を
 
 共同著作物
 
と呼ぶ。
 

2014年7月29日 (火)

僕がイラストの著作権を譲渡しない理由 2

 
イラスト(美術)の著作権は、そのイラストを描いた人に帰属する。
これが大原則だ。
 
しかし、「イラストの著作権はそれを発注した会社に帰属する」と言ってくるところがある。
「イラスト制作にお金を出すのは発注する側であるから、その権利は「お金を出した発注主が持つ」という主張だ。
 
しかしこれは間違っている。
 
それが成り立つのは、発注主がイラストレーターを社員として雇っている(雇用関係を持つ)場合のみなのだ。会社がその社員に(すでに給料を払っていて・厚生年金のお金や福利厚生費も負担して)イラストを描かせるのね。
 
これを「職務著作物」と呼ぶ。絵の著作者は会社だから、著作権は会社に帰属する。
 
つまりそれ以外は(会社が外部に発注した)イラストの著作権は(外部の)イラストレーターに帰属するのだ。
 
かりに、イラストのアイデアやだいたいの構図がすべて発注主の側で用意されていたとしても、著作権は、それを実際に仕上げたイラストレーターに帰属する。
 
元のスケッチが、もちろんそれだけでひとつの著作物だったりすることもある。そのスケッチを元に新たに仕上げられたイラストの権利は、仕上げた人だけでなく、元のスケッチを描いた人にもあるのでは?
 
それはその通りだ。
 
でもそんな優れたイラストを発注側が描けるなら、わざわざ外部に仕事を出す必要はない。
元のスケッチを超えた優れたイラストが欲しいからこそ、わざわざ外部に(お金を出してまで)仕事を依頼するのだ。新たに描かれたイラストは独自の創作物としての存在価値があり、その新たに作り上げられた創作物に対して、独自の著作権が発生するのである。
 
その3につづく)

僕がイラストの著作権を譲渡しない理由 1

その1
いずれ自分の作品集に(自由に)収録するためだ。
 
その2
僕は(だいたいは)いつも作品には全力を投入する。
メカを描く場合は、なるべく他には無いようなメカにするように務めている。
だからそんなメカがいずれフィギュアやプラモデルになったりの可能性もゼロではない。
そんなとき、著作権を売ってしまっていると、自分のコントロール下におけないでしょ。
 
実際には、これらの立体物などへの翻案は、最初の契約のときに「立体化の権利も一緒に売買するね」と「特掲」しておかなければ、それら二次的著作物への利用の権利は「イラストの作者の元に残っている」と解釈されるが、そんなルールを知らない人に勝手に立体化されちゃう恐れもあるので、念のためにそうしているのだ。
そういったわけで、僕は著作権を売ることはしない。
 
じゃあ、どういう契約にするかというと
 「使用権の許諾」
だ。
 
これが少しギャラも大きくなって
 「独占的使用権の許諾」
になる場合もある。
 
その「独占」は、自分の作品集への収録は例外であることは言うまでもない。
 
でもときどき、どうしても売ってほしいというクライアントがいる。
例えば、コンピュータを使ったゲームの絵だ。
カードイラストとかね。
 
コンピュータゲームの場合、別ハードへの「移植」などがある。
「移植」も含めて発注者側は権利を押さえておきたいのだ。
でも、それは「著作権の譲渡」の理由にはならない。
最初に「移植も含めて使っていいよ」という「使用権の許諾」契約を交わせばいいのだ。
 
今回とくにカードゲームを例に挙げているのは・・・。
 
ゲームに使われるイラストは、ゲームユーザーにしか公開されない。
それが大事なアイテムだとすると、その絵が見られる人はさらに減る。
でも僕たちイラストレーターは、自分の作品を少しでも多くの人に見てもらいたいのだ。
 
幸い、クライアントの側で、広告で前もって「こんなレアカードがあるよ」と告知してくれる場合もあるが、すべてのカードがそんな風に告知に使われるわけではない。
 
だから僕らは、そんなイラストを自分の作品集に収録して、ゲームに参加しなかった人たちにもみてもらえる機会を用意したいし、それを前提に仕事を引き受けるというわけ。
 

2014年7月27日 (日)

SF大会(2014つくば) ライブペイントの報告

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▼概要
期間 :2014年 7月19日 〜 20日 (二日間で合計6時間くらい)
場所 :第53回日本SF大会『なつこん』(つくば国際会議場)
テーマ:2913年に描いたロボットの手前に人物を描くという、前後篇の後編にあたります。
大きさ:幅1.5メートル 高さ4メートルほど
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今回の会場は陽がさんさんと降り注ぐ、つくば国際会議場のエントランスの一角▼
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▼タイムラプス動画による記録
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▼頭に付けたアクションカムで撮影
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描き始めはこんな感じ▼
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▼ライブペイントの魅力
・普段は描けないような大きな絵に挑戦できる
・普通の展覧会のように、会期までに何が何でも絵を完成させる必要がない
 (どんな絵でも、締め切りがあるって重荷なのです)
 (時間が来たらそれでオシマイ)
・観てくれる人とその場で会話ができる
・自分の体力が衰えていないことを確認できる
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女性の顔がうまく描けるかどうかで成功か失敗かが決まります▼
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▼ペイント中にどれだけ歩いたか、歩数を測ってみました
・1日目 
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・2日目 
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撤収。なんとなく寂しい・・・▼
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ライブペイントを終えて東京に帰ったら土砂降りでありました・・・▼
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▼これまでの動画はこちら
・第52回日本SF大会 2013 こいこん(広島)

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