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2011年10月31日 (月)

垂直世界7 コスチュームデザイン

垂直世界6 これまでの経緯 からのつづき
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 SFマガジンの締め切りが迫ってまいりましたーー

 ここしばらく『銀河英雄伝説メカ設定画集』アプリの作業をしてましたが、こちら『垂直世界の戦士」のイラストの締め切りも近くなってきたので、ここらで作業再開であります。

 さて今回は、登場人物が、垂直の壁を歩き回るための装備のアイデアです。
 細かい部分は、絵を描きながら仕上げていくので、ここではおおざっぱにしか描いていません。
 どちらかというと、アイデアを思いついたときに「忘れてしまわないように」「その場で」さらさらっと描いたスケッチですね。

 そうだ。ネットの画像検索でオートバイのノートンインディアン、そしてワトソニアンというメーカーが作ったサイドカーの写真も、これで充分かなというくらい集まったので、準備は万端。

 以下は、インディアンのオートバイの画像を蒐集した,その一部です。
 (著作権のことがあるので、デスクトップ画面のみ)▼
S

 そしてこちらが、コスチュームのスケッチ▼
S_2

 ノートンに乗る主人公は、「垂直世界」はまだまだ初心者なので、身体を壁に垂直に保ちための装置(壁に向けてワイヤーでピトンを打ち込みます)は、腰のベルトとブーツの両方を装着してますが、インディアンに乗る女性は、「垂直世界」で生まれ育ったので、ブーツにしか装具を付けていません。そのかわり、脚だけで身体を壁に対して垂直に保つくらいの身体を持ち、筋肉隆々と描写されています。このあたりもイラストで表現したいな。


垂直世界8 死の壁を走るインディアンにつづく
(イラストの公開はSFマガジン2012年1月号で)


2011年10月25日 (火)

パワードスーツ デザイン改 7

パワードスーツ デザイン改 6からのつづき
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 今回、ぼくが挑戦しているのは、どうやら、ぬえのパワードスーツに外骨格パワードスーツを組み合わせたものになりそうな予感が当初からあったのですが、それは、股の蛇腹だけでは、バックパックの重み込みの上半身を支えようがないゾと(ウェーブのプラモデル開発のころから)考えるようになっていたからです。

 例えば、NASAの火星用宇宙服の「手首」は(ぼくが映像で見たものは)回転するお椀状のパーツが連なったもので出来ており、パワーアシスト機構が採用されておりました。
 中に人が入っていなくても、外からの信号で動くようになっていたのです(これは、筑波大学のロボットスーツも同じで、人間が必ずしも着ている必要はありません)。

 でもそれ(蛇腹)は、手首だから出来たことで、腰の関節には難しいと思われます。
 深海用の『ジム・スーツ』も新しいバージョンは同じ方式ですが、本体の重さは、浮力で相殺されてます。

 話を戻すと。

 というわけで、これからいろいろ検証していく段階で、外骨格パワードスーツというものは、どういうものなのかを皆さんに説明する必要を感じたのであります。

 以下は、その例です。
 『機甲天使ガブリエル」の本に掲載するために、ぼくが考えた、介護用パワードスーツです。

  99s

 このスーツのキモは、

  ・患者に恐怖感を与えてはいけない
  ・スーツの顔の前面部分に映像を投影するスクリーンがありますが、このスクリーンの本当の目的は、患者との間における「マスク」の役目を果たします。
  ・外骨格のアームの関節部分(蝶番の部分)が「ハサミ」のようにかみ合わさらないようにして、「切断」事故が起きないように、そこに「隙間」が残るようにする
  ・スーツが転倒したときに、なるべくスーツを着た人間がダメージを負わないように、外骨格のアームやフレーム、ガードを配置する
  ・必要がないときは、スーツと人間の腕は、別々に動かせる

 というものでした。
 実際にこんな細いフレームでは、たとえモーターのトルクが強力でも、アームそのものの剛性が足らず、しなってしまうでしょうから,アームの先端はブルブル震えてしまい、それを押さえ込むプログラムが必要になると思いますが、それはまあ、コンセプト・イラストなので。

パワードスーツ デザイン改 8につづく(かも)


  


2011年10月24日 (月)

パワードスーツ デザイン改 6

パワードスーツ デザイン改 5からのつづき
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前から書いているように、パワードスーツをデザンしたり、描くにあたっての僕のこだわりは、

  人が着るものであること
  人体は、いちおう現実に存在する人体に(自分の技術で可能な限り)近いものであること
  メカとして美しいこと

 そうは言っても、僕が1977年に、早川書房の『宇宙の戦士』文庫版のイラストを担当した時、僕自身はこの条件のうち上2つを備えていませんでした。

 2004年に、ウェーブから発売された1/12のプラモデルを、中に人間が入るような改造に挑戦した時、それを痛感。
 肩と肘の蛇腹は何とかなったものの,腰の付け根は、歯が立ちませんでした。もちろん、プロポーションをいじれば、なんとか可能かもということはわかりましたが、それでは宮武のデザインから離れてしまいます。

 そこで今回は、宮武が作り上げたメカとしての美しさの制約から「逃げる」ために、自分のセンスで(自分の責任で)、つまりデザインをいじるしか方法は残されていないと考えたのでした(関節などの構造そのものの変更も視野に入れる)。

41s
48s

 今回、自分でデザインしていくために、元となる人体の絵を用意しました。
 側面、少し後ろ側からの絵では、脚の付け根とバックパックの関係を、
 前からの絵では(なかなか笑えるポーズになってしまった・・・)、脚を正面側ちょっと内側に出したときや、脚を横に水平にあげたときの、脚の装甲板等を検証します。

 これらの絵の上に、パワードスーツの、その内部の機構部分を含めて順番に描き込んでいく予定です。

42s


パワードスーツ デザイン改 7につづく

2011年10月22日 (土)

垂直世界6 これまでの経緯

33s

垂直世界5 からのつづき
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 僕の創作意欲の源泉は、面白い小説デス。
 毎日、寝る前、ベッドの中での1、2時間が読書タイムとなります(またはネットにアクセスしてその日を終えるのですが)。

 昨年の5月にアップルからiPadが発売され、その使い心地に惚れて自分のiPad画集を出そうと決意してからは、
 今年9月のSF大会までに発売しようと死にものぐるいの作業がつづき、それは自分の読書の時間を削ることにも繋がってしまいました。

 ひと月ほど前にやっとそんな日々も何とか終り、発売されたと知ってすぐに読みたかったけど読めなかった本『老人と宇宙4 ゾーイの物語』(ハヤカワ文庫)を読み終えました (面白かった)。そしてその次に選んだのが「垂直世界」というタイトルに引かれて図書館で借りた、K・W・ジーター『垂直世界の戦士』(ハヤカワ文庫版は1998年刊行 Kevin Wayne Jeter "Farewell Horizontal")だったのです。

 読み出してすぐに、その物語世界に引き込まれました。

 雲を遥か下に見下ろす巨大なビル『 シリンダー 』の外壁、垂直面で繰り広げられる冒険。
 垂直の壁を自在に行き来するオートバイ。
 垂直面で行われる部族同士の戦争。
 改造されたサイボーグ戦士。

 その描写どれもが、ページを捲るたびに、強烈なイメージとなって僕の頭に浮かんできたのです。
 しかしすでに10年以上前に発売されたこの小説には、僕ではない別の方がカバーイラストを描いていて、僕はひとりの読者にすぎないのです。

 でも、この小説を絵にしてみたい欲求は高まるばかり。そんな気持ちをツイッターでつぶやき、それならもう勝手に描いてしまおうと決意して、発表する媒体を探すことにしました。

 最初に思いついたのは、オートバイの雑誌。
 小説はジーターの作品ですから、それを絵にするためには著作権の問題をクリアせねばなりません。その交渉ができる媒体でなければならないからです。

 そして次に思い出したのが( 青い鳥 )SFマガジンでした。

 SFマガジンでは、今年2011年から、巻頭のカラーページで、イラストレーターがSF・ファンタジイの好きな本を1冊選び、それをカラーイラストで描く、という企画が始まっていたのです。
 あわてて(もう夕方だった)SFマガジンの清水編集長に電話をしてみたら、

 「描き上げたら連絡してください。」と快諾していただけました。

 そしてすぐに、SFマガジン編集部、この巻頭カラーページの担当である梅田さんから、2012年1月号に掲載したい、という電話があったのです。

 小説を読んでいるときにはこのような展開になることは予想だにしておらず、文章を細かくメモしているわけでもなかったので、まずは記憶だけでラフスケッチを描き始めることになりました。
 構図もある程度固まったので,ここでもう一度小説を読み直し、細部を調整したり、メカのデザインをしていくことになります。

垂直世界7につづく

垂直世界5

垂直世界4からのつづき
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 寝る前に思いついた構図も試してみました。
 ネットで検索して見た、絶壁に中吊りになったテントの写真を参考にしています。

 これを描いているときに思い出したことがあります。

 *もともと、この小説。自分が絵を描くことになるなんて考えてもいなかったので、今は、記憶や印象だけで作業を進めています↓

 垂直なオートバイは、大きな距離を移動するときは、壁に縦横に張られたケーブルを支えにします。したがって、ケーブルがない場所には行けません。ただし、近場をうろちょろするだけなら、オートバイのハブ(前後輪の車軸部分から先端にピトンが付いたワイヤーを、壁の表面にある隙間に打ち込んで、これを支えにします。

 垂直な人間も、これと同じ方式です。
 ブーツと腰に巻いたベルトから、ピトンを周りに打ち込みます。
 (だから絵の中には、オートバイのハブと、人間が履いているブーツをどうしても入れたい)

 そこまでは考えていたのですが、では、ケーブルを挟む機構部分は、オートバイのどこにレイアウトされているのでしょうか。これまで僕は、単純にオートバイは、ケーブルそのものの上を、「綱渡り」みたいにして走っていくものだと「漠然と」考えていたのですが、どうもそれじゃないのではないか、という疑問がこの絵を描いているときに浮かびました。

 オートバイにはサイドカーが付いています。
 主人公はこのサイドカーに畳んだテントなどを収納していますが、ひょっとすると、オートバイ本体と、サイドカーの間の指示具の下に、ケーブルを挟むメカがあるんじゃないか?
 そうであれば、ケーブルを壁から少し離すようにすれば、ケーブル全体を包み込むように掴むことが出来るから、ケーブルが壁に固定されている様子も絵に描くことが出来て、より「リアル」になるんじゃないかと。


26s

垂直世界6 これまでの経緯につづく


垂直世界4

垂直世界3からのつづき
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 いったん初心に返ることにした。

 うまくいかないで悩むときは、いくらいじくり回してもダメなことが多いのだ。

21s

 垂直世界のオートバイには特別なハブが。
 垂直世界の住人は特別なブーツを履いている。

 画面から外すわけにはいかないのだ。

 こちらのレイアウトも進めてみて、ダメならまた考えよう。

垂直世界5につづく


垂直世界3

 だ、だめだ・・・。

 主人公のポーズ、すごく難しい。
 原書のカバーを描いた画家は、僕には真似できない素晴らしい絵を描いていたことが判明。

・・・
垂直世界2からのつづき


0718s

 垂直の壁からぶら下がるテントとか、描こうとしたんだけど、
見ないで描くのは無理だった(仕事場にはネット環境がない)。

 そこで帰宅後(先ほど)検索してみたら、

 これは凄い光景だー。


 ということで、
垂直世界4につづく


2011年10月21日 (金)

垂直世界2

垂直世界1からのつづき

 原書のカバーアートは、もし僕が,この仕事を引き受けていれば、僕も描いていたかもしれない構図に非常に近いものでした。

 垂直の壁からぶら下がった主人公をメインに据え、でも遠くに浮かぶ風船エンジェルを画面に入れるには、もうこの構図しかないのです。

 違っていたのは、原書のほうは、オートバイが遠くに小さく描かれていることと、壁の表面の描(えが)きかたですね。

 実は、オートバイが壁を移動するためには二種類の駆動メカが使われており、その一つである、太いケーブル(アメリカ、ロスアンゼルスのケーブルを使った交通システムに酷似している)が、原書のカバーには描かれていません。

 オートバイも、遠くのほうに,見えるか見えないくらいに描いてあるだけなので、このアーティストの興味は、あまりメカには向いていないようです。

 同じく、遠くに見えるサイボーグ戦士も、デザインは見た目が貧弱かな。小説では、もっとおどろおどろしいのですが。

 小説のカバーイラストを描く時、いつも悩むことがあります。いちばん「絵」になるシーンは、「ネタバラし」に繋がりかねないということです。幸い、僕が今回、描くイラストにそんな心配はなく、自由に描くことが出来ます。それでも、インディアンに乗った女性と、サイボーグ戦士は、物語の設定上、同じ画面に描くわけにはいかず、どちらかを諦めるしかありません。ぼくはオートバイを選択したのでありました。


06s

 次に考えねばならないのが、手前のオートバイ(ノートン社製)の向きです。

 遠い側のオートバイは、壁に垂直に立った女性を、「 顔が見える 」ように描きたかったので、向きも自動的に決まりましたが、手前側、主人公のオートバイはまだ決まっていません。オートバイの傍にいる(またはオートバイにまたがっている・またはオートバイに乗り込もうとしている・オートバイからはなれて壁にへばりついている)が、ここで何をしているのかが決まっていないからです。絵の横方向が垂直でありながら、重力の方向が、絵の「下方向」にあることを、直感的に、この主人公のポーズで、読者に伝える必要があるので、ここは吟味して、こだわって、仕上げる必要があると感じているからです。

垂直世界3につづく


垂直世界1

 まだ 『パワードスーツ デザイン改』 の連載は終っておりませんが、ちょっと気分転換に、例の「垂直世界」の絵のラフスケッチを。

 この絵のテーマは、

 まずは、垂直であること。
 その垂直の壁に、オートバイが2台、停車中であること。
 オートバイが停車中である理由は、主人公が、オートバイから降りて垂直の壁にビバーク中であるからであること。
 垂直の壁にどのようなテクノロジーでもってオートバイが停車できるかを(普通だったらまあ考えられないようなテクノロジーを使っている)絵にしてみたい欲望があること。
 かっこいい女性が『インディアン』というメーカー名のオートバイを愛用していること。
 インディアンのオートバイには,インディアン(アメリカ先住民族)の顔のエンブレムが付いていること。

 などが理由により、構図を決定。
 普通なら、デッサンを吟味したりするために、いったん絵を90度回転させて描いた後に、また反対方向に90度回転させて、それを繰り返しながら絵を描き進めていくのですが、今回は、少なくとも最初の段階ではいっさいそういった作業手順を取らず、

 常に主人公やオートバイや、奇麗なお姉ちゃんは、下方向(垂直方向)に重力によって引っ張られていることを、頭の中に意識できるように,この方向で、描き進めるのです。

 追記。インディアンは赤が似合う、ということが検索したらわかったので、画面、向かって左のオートバイを赤くしよう!

原書のカバーイラストはこちら

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垂直世界2につづく

2011年10月17日 (月)

パワードスーツ デザイン改 5

パワードスーツ デザイン改 4からのつづき
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重心とスリッパの話
 
 文章だけじゃ変化が乏しいかもと漫画で挑戦してはみたものの (やっと完成デス)、時間がかかった割には効果は少なかったかも。
 しかも文章での捕捉も必要みたいダ。

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 歩いたり、走ったりするとき、パワードスーツはどのように方向転換をするのか?
 つまり人間は?

 自分で試してみると、曲がりたいと思う方向へ、踏み出した足の爪先を向けつつ、反対側の足を大きく蹴って身体を、曲がりたい方向へ傾けます。
 このとき、足首はほとんど回転しません、脚全体が、膝関節も含めて、水平方向、横に回転します。足首と股の間に位置する膝は(何本もの靭帯で保持されており前後にしか曲がらない)直接には関係してきません。

 その動きを作り出すのが、腰の付け根、股の関節です。人間の股の関節は(肩も同じ)、球と、それを包み込むお椀の形をしているので、かなり自由自在に動きます。
 そのかわり、モモやお尻やお腹の中を縦に通っている筋肉でがっちり押さえ込みつつコントロールするわけです。
 股の関節は、それを3軸に置き換えるとすれば、前後に160度。水平面で180度。横に90度ほど広げる動きとなりますが、歩いたり走ったりするときは、この脚を左右に開くときの動き以外の、前後と水平、いわば2軸を使うことになります。
 スタジオぬえのパワードスーツは、全体のシルエットをゴリラに似せるためにモモの断面を前後に長くしてしまったので、モモの中央部分に3軸のうちの1軸、回転軸を配置することが出来ません。
 人間と同じように動きすべてを股関節に受け負わせることになるのです。そして大きく自由に動かせるようにすればするほど、そこが防御の弱点となります。西洋の甲冑や日本の甲冑は、股関節だけでなく、股間もすべて覆う防護板を採用していますが、この方式は、どうしても結果的にガンダムやマシーネンに似てしまいます。
 そういうわけで、当時は(ガンダムやマシーネンの前の時代)、股の蛇腹が露出する姿勢のときには、モモから防護板がせり出してきて、蛇腹を覆うという設定にしました。残念ながらこの設定は、ウェーブのプラモデルでは再現できていません(ヒジの蛇腹は上腕部分から防護板がせり出してくる設定は擬似的ながら再現しています)。

 そして、重心の話。

 重心は、上にあるほうが、人もパワードスーツも、自転車も、オートバイも、姿勢の制御が簡単になります(仰向けに寝そべって乗るリカンベントと呼ばれる自転車、特にローレーサーというタイプのリカンベントは重心が極端に低く、コントロールが非常に難しい)。
 駐車中やアクリルのケースに飾ってあるだけなら、重心は下のほうが安定しますが、機敏に動く場合は逆効果です。

 二本足の生物ということなら、ダチョウがそうですね。
 高速移動中、重心は殆ど上下しません。脚も細く、人間のように、脚の動きに対応して前後に振る腕もありません。
 逆の例として、人間が革製の登山靴を履いたときのことを考えてみましょう。
 山道を歩いているだけなら、背中に重い荷物を背負って、坂を登ったり降りたりするだけなら、まったく問題はありません。しかし、そのかっこうでいざ走ろうとしたら、真っすぐ前方向に一直線に動いていてさえも、重心は上下動し、質量の大きな足の動きを押さえ込むために上半身を反対方向へ捻るように動かさねばなりません。とても非効率なのです。

パワードスーツ デザイン改 6 につづく

▼関連記事
終りなき戦いの戦闘服 その1
終りなき戦いの戦闘服 その2

ダイナミックフィギュアの作り方 8(最終回)

ダイナミックフィギュアの作り方7からのつづき
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 『ダイナミックフィギュア』は今年の2月に早川書房から発売された、巨大ロボットの運用を真正面から取り上げた、三島浩司さんのSF小説です(上下巻)。僕がカバーイラストを担当しました。

 そのメイキングをブログで連載したのですが、最近もブログへのアクセスに「ダイナミックフィギュア」をキーワードにしてこられる方がけっこうな数おられるので、ここらで最終回を。


 今年の9月3日〜4日に静岡で開かれた『第50回日本SF大会』用に作ることになった「サイン帳アプリ」(無料。申し訳ありません。iPhone、iPad専用です)には、僕の作品が数点、メイキング簡易アニメ付きで収録されており、『ダイナミックフィギュア』のカバーイラストと、ダイナミックフィギュアの身長や形状を検証した画像やアニメも入ってます。

 ダイナミックフィギュアという名の巨大ロボットをデザインするにあたって最初に考えたことは(この連載の最初のほうを読んでいただけば書いてありますが)巨大ロボットにつきものの大きな足だけは描きたくない。そして地上で素早く行動できる脚や足の形はどんなものが良いのだろうか、ということでした。

 そのアプローチの結果が、『ダイナミックフィギュア』なのです。現在続いているパワードスーツについての記事と一緒に観ていただければ幸いです。

                ▼   ▼   ▼   ▼   ▼   ▼   ▼   ▼

画集アプリでダイナミックフィギュアの画像を表示中に、ツールバー(画面のロングプレスでオン・オフ)左端の『 i 』(インフォメーション・アイコン)をタップ
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右下に出る「渦巻き」模様のアイコンをタップすると、メイキングの簡易アニメの再生が始まります。
02

カバーイラストのメイキング簡易アニメーションのスクリーンショット▼
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おなじく「人間との対比」の図▼
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「人間との対比」の図 メイキング簡易アニメーションのスクリーンショット▼
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*このアプリには、今年の星雲賞受賞作、マイクル・フリン『異星人の郷』(東京創元社)のカバーイラストも、メイキング簡易アニメと一緒に収録されています。


2011年10月16日 (日)

パワードスーツ デザイン改 4

パワードスーツ デザイン改 インターミッション2からのつづき
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28s


日本アニメの黎明期のキャラクターデザイン

 そのころのアニメ作品は劇場用映画だけ。そもそもテレビがまだ発売されてなかったし。
 劇場用のアニメーションは手間も予算も制作期間もすごかったのでしょうね。登場人物(人物キャラ)のデザインは、いちど石膏などで立体の人形がつくられ、それが演出や作画の参考にされます。
 このことを、僕は、叔母から進学祝い(中学だったかな)でプレゼントしてもらった、平凡社の『国民百科事典』で知りました。
 例としてあげられていたのが、東映動画の『安寿と厨子王丸(1961年)』。
 立体の「原器」があれば、それを平面の動画にしたときの立体の解釈にそんなに間違いはおこりません。
 アメリカのディズニー映画が、実際に人間の動きを撮影して参考にしていたり、アニメというものは、その根底に、立体があってはじめて成り立つものだという考えが子供の頃から僕に刷り込まれていたのであります。

 *そして、なんと宮武も、この『国民百科事典』が愛読書だったそうです。

 ネットで検索してみたら、『国民百科事典』は全7巻で1万円。内容からすれば画期的な安さですが、それでもけっこうな金額です。叔母は新聞記者、叔母の旦那さんは理科系の大学の教授でした。その叔父からは、科学関係の本をたくさん貰いました。

 小学生の時には、学校の授業で『ガリバーの宇宙旅行(1965年)』を観に行ったり、その後もテレビで『スーパー・ジェッター』『マジンガーZ』などのSFアニメを一生懸命観ましたが、僕の興味の対象は『サンダーバード』系統の例えば『スーパーカー』『謎の円盤UFO』や『キャプテン・スカーレット』に移っていったのであります。

 スタジオぬえの前身となる有限会社を立ち上げたときの最初の仕事が『ひらけ!ポンキッキ』(ガチャピンとムックは今でも描けます)と、『ゼロテスター』や『宇宙戦艦ヤマト』。
 それが『勇者ライディーン』の仕事へと繋がりますが、僕自身は『宇宙戦艦ヤマト』の裏番組だった『アルプスの少女ハイジ』のほうが好きでした。(ハイジのセル画を持っています。アメディオのぬいぐるみもたくさん買いました)。

 以上が僕とアニメの関わり(初期から中期)であります(笑)

玩具の仕事
2902s
 『ゼロテスター』の仕事をくれた方が玩具会社のタカラに転職して、そちらからも仕事が入るようになり、タカラの『変身サイボーグ(透明な人形で、オートバイなどに変身します)』や『マグネロボ』の企画に携わりました。
 変身サイボーグの仕事では、発売中の人形の四肢の形状が人間と違って断面が真円だったり、関節がどんな方向にも曲がるのが許せなくて、筋肉や関節の動きに、人間と同じ制限をつけた絵を描いて提案しましたが、ことごとく没になりました。逆に、マグネロボでは、描いた絵が実際に木型(モックアップ)になって出来てきた時、その造形士の技術に感動したものです。
 でも僕は、だんだん玩具やアニメの仕事とは離れていきます。本来目指していた、文庫本のカバーイラスト、挿絵が中心になってきたからでした。
 だから巨大ロボットアニメの設定については、宮武が描いているのを時たま横から見るくらい。

 テレビアニメには、当然のように玩具会社がスポンサーのメインで、巨大ロボットは玩具の発売が前提です。多くが玩具会社の内部で決められた形がそのまま番組になる世界に、僕は嫌気がさして、ますますアニメを見なくなるのですが、それを書くとちょっと差し障りも出てくるので、このくらいにします(書いてるじゃん)。

巨大ロボットアニメ
3002s
 しばらくアニメから遠ざかっていたとき、『ガンダム』を少しだけ観ることになりました(最初の数話)。そしてそれをデザインした大河原さんの設定画や、クリーンナップした安彦さんの設定画やポスターの絵もあとで観る機会がありましたが、ほんとうに驚いたのは、それが玩具やプラモデルになって発売されたとき。
 もともと、巨大ロボットは、設定画が描かれる時、その大きさを表現するために、下から見上げた視点で描かれています。だから、足は巨大で、上のほうにある頭は小さい。それが、立体物になったとき、絵描きがわざわざ見上げたように描いたことなど関係ないとばかりに、そのまま商品になっていたのでした。

 宮武が仕上げた『宇宙戦艦ヤマト』の設定画も、じつはかなりディフォルメされているのですが、そのデフォルメがそのまんまの商品がたくさん発売されました。
 こうして巨大な足が当たり前のようになった巨大ロボットアニメ、「絵の解釈の仕方の違い」のせいで、独特の世界が出来上がったのね。

 僕が所属するスタジオぬえは、いちおう理屈にこだわる人間が多いので、ガンダムの仕事をすることになったスタジオぬえの森田繁は、「巨大な足は、宇宙空間で、姿勢制御バーニアを使うことなく、すばやく姿勢を変えるために必要なのだ」という、まるで松崎健一が「ミノフスキー粒子」という物質を考え出したときのような、何とも新しい科学が生まれることに。

 *10数年前、ぼくが小学館の仕事でドラえもんとドラミちゃんをShade(国産3DCGソフト)で作ったときも、小学館からドラえもんとドラミちゃんの「立体原器」が届きました。縦20センチくらいで、かなりの重さがありました。


パワードスーツ デザイン改 5 (いよいよ各部の構造を、具体的に紹介していきたいと思います)
につづく


パワードスーツ デザイン改 インターミッション2

パワードスーツ デザイン改 インターミッションからのつづきです
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 日曜日の『月例荒川サイクリング』は、雨が降りそうとのことで中止になってしまいました。
 そこで、日曜日にブログ用の文章に集中する予定です。

 ということで、今回も絵だけ。

23s

 脚の後ろ側には、胴体を支えるための支柱や関節を配置するので、横幅は前側に比べて厚くなる感じで描き進めます。したがって、脚の断面は、両側が膨らんだ三角形になる感じ。


26s

パワードスーツ デザイン改 4 につづく


2011年10月15日 (土)

パワードスーツ デザイン改 インターミッション

パワードスーツ デザイン改 3からのつづき
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 文章のほうは、ちょっくら休憩であります。

 前回までである程度、全体のイメージがかたまったので、これから各部の検証に入ります。もちろん今まで左腕に隠れていた、股間部分の構造も考えねばなりません。

16s

 てなわけで、正面からの絵もいちおう完成させてみましたが、まだ股間の構造のイメージが浮かんできません。どうやら、斜め後ろから見た絵や、歩行中の股関節の検証を先にやる必要がありそうです。


21s

パワードスーツ デザイン改 インターミッション2 につづく


2011年10月14日 (金)

パワードスーツ デザイン改 3

パワードスーツ デザイン改 2からのつづき

 今回は、ツイッターやミクシィで質問があった、スリッパ(足底のパーツのこと)と、パワードスーツの(戦闘中の)重心のことを文章に書く予定でしたが、午後から出かけてたし、夜は『銀河英雄伝説メカ設定画集アプリ』の作業があって時間が取れませんでした。

 そこでスリッパについては、絵(デザインそのもの)に語らせることにしました。

 重心のほうは、文章を書いていたら、日本のロボットアニメや、さらには、日本のアニメーションの黎明期についても書きたいことが出てきてしまい、どんどん文章は、長く、まとまりがなくなってきたので、少し推敲してからアップロードすることにします。

 というわけで、今回は、今現在のパワードスーツの絵だけであります。
 ついでに、iPad・iPhone画集の宣伝もさせてね(^^)
14s

パワードスーツ デザイン改 インターミッションにつづく


2011年10月13日 (木)

パワードスーツ デザイン改 2

パワードスーツ デザイン改1からのつづき

 スタジオぬえの宮武、そして宮武からメカデザインを学んだ河森の話や文章に登場する言葉が「スタイリング」です。
 巷に言われるデザインは、本来の「デザイン」ではなく、スタイリングに過ぎない、というもの。

 ここからは僕の勝手な解釈ですが、「デザイン」は「機能」を形にしたもの。曲面を美しく整えたり、バランスを変えてプロポーションをいじるのはデザインではなくスタイリング。

 その理屈でいうと、今回、僕がこのブログで紹介するパワードスーツは、メカデザインではありません。すでにデザインは完成しているのですから。
04s
 さてパワードスーツ。
 どこまでプロポーションをいじるのか。
 出発点は、スーツを着る人間との調和。
 ぼくにとって常にこれが最優先であり、これまでのデザインやスタイリングの殆どは、僕自身が仕上げたものであっても、満足いくものではありませんでした。

 実際に作業を始めたところで最初に悩んだのが、パワードスーツの動力です。宮武が考え出したパワードスーツは、タービンエンジンで動いている(らしい)。したがって、スーツには「空気取り入れ口」がある。これを残すかどうかで、今後の展開が大きく変わってきます。
 僕は、タービンエンジンがどんなものかを深く理解しているわけではなく、理解できていないものをデザインすることは出来ないので、動力を変更することで、どういう形が表面に表れてくるかがわかりません。
 でも、ぬえのパワードスーツであるからには、まずはここを外すわけにはいかないと考えました。
 (あとで、違う動力のバージョンも描く予定です)

 ほかにも小説の描写では

「ロケット弾発射筒に弾丸をつめていた」
「発射筒を肩にあげ」
「背中に背負ったY型発射機(ワイラック)」
「俺たちの顔を覆っている金魚鉢には鉛が厚く塗ってあるし」
「へまをして生のままそちらを向いていたとしても、顔を伏せ、その(原子爆弾の)閃光を防護服のほうに引き受けさせるように」
「左手に持った携帯火炎放射器(ハンド・フレーマー)」
「弾丸はおれの強化服にあたってはねかえり、おかげで耳はガーンと鳴り、ちょっぴりよろめいたが」
「おれはベルトに手をやって、最初にさわったものをつかむと下手投げにころがした」

 こんな感じなんですね。

 全体の印象はといえば、

「こいつを着ると外観は大きな鋼鉄製のゴリラで、ゴリラサイズの兵器で武装されている」
「三基のジェット」
「着地接近開閉装置(近接信管に似た簡単なレーダーの一種)」
「ヘルメットのまわりにはゴタゴタと装置がつけられているので、まるで脳水腫にかかったゴリラのように見えるが」
「ロケット弾発射筒は、手を離すだけで、いざというときまで格納されていまう」

 などなど。
 僕と宮武は、これらの描写の中から、自分に都合のいい部分だけを採用し、気に入らないものはあえて読まなかった振りをすることにしたが、それらは、最終的には些末なことでしかない。
 いちばん大事なのは、パワードスーツは、「本物のゴリラを抱きかかえて押しつぶす」力があるし、
 「まぬけな戦車隊があって機動歩兵に襲いかかってくるようなことがあれば、たったひとりの機動歩兵だけで戦車の一集団をひきうけ、独力で全滅させてしまうことだってできるのだ」

というふうにも表現されていること。

 この最後の部分を絵にすることが、「デザイン」なのです。

 だからポール・バーホーベン監督の映画『スターシップ・トゥルーパーズ』は、ぼくには耐えられないものだったのでありました。バーホーベン監督には『ロボコップ』もあるわけですから不可能ではなかったはず。げんに、『スターシップ・トゥルーパーズ』映画化のためのスケッチ集には、ちゃんとパワードスーツがありましたから。

 その点、今回の荒牧監督は、ぬえ版パワードスーツをご存知だし、『アップルシード』という作品を過去に作っておられるので安心して待つことが出来る、・・・かな。


10s

パワードスーツ デザイン改 3につづく


パワードスーツ デザイン改 1

 ソニーピクチャーズの新しい『スターシップ・トゥルーパーズ フル3DCG』新作映画が発表されましたね。監督はアップルシードの荒牧伸志さん。
 ホームページの画像を見ると、機動歩兵のデザインは、これまでのシリーズに登場したスーツを踏襲したみたいな感じですが、なかなか楽しみ。

 でも、自分としては、宇宙の戦士のパワードスーツは、宮武のデザインへの思い入れがあって、他のデザインは認めたくない気持ちもあるのですが、宮武が、サンライズで(セル画の)アニメが作られたときに、リデザインしたように、僕自身もここいらで (プラモデルを使って関節部分などの検証をした結果や、最近の甲冑の取材で得た知識を元に) 試しに描いてみようかな・・・。
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パワードスーツ デザイン改 2につづく


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2011年10月 5日 (水)

日本の甲冑(番外編)

 パワードスーツの項目に含めて書いてきた「日本の甲冑」ですが、今回はちょっとお休みをいただいて、絵に描かれた鎧について書いてみたいと思います。

 もともと、僕が、今の仕事を選ぶ切っ掛けになった小説『火星シリーズ』(E・R・バローズ著←ターザンの生みの親です。東京創元社)には、剣を帯び、鎧に身を固めたヒーローが登場します。
 そのイラストを担当したのが武部本一郎さん。
 武部さんはその卓越した描写力であらゆるテーマをこなす挿絵画家でしたが、大人向けのSF作品に起用されたことで、瞬く間に世界中のバローズファンを魅了することになります。
 そのSFやファンタジーの世界には、モデルがありました。
 19世紀後半から20世紀前半にヨーロッパやそしてアメリカで流行した、象徴派やラファエル前派の画家たちの絵です。象徴派やラファエル前派の絵には、美女だけでなく、甲冑を着けた騎士が度々登場します。武部さんは、「日本で」そんな絵を現代に蘇らせたのです。
 武部さん以前にも、黒田清輝など「白馬会」の大正時代の画家たちが、ラファエル前派を受け継いでいますが、昭和では武部さんが、(僕の知っている範囲では)最初で最後でした。

 ラファエル前派以前にも、多くの画家のパトロンだったヨーロッパの王族や貴族の肖像画として、豪華な衣装や甲冑を纏ったものがたくさん描かれましたが、そこにはあまり美女が登場しません。
 武部さんの絵を出発点として、ぼくがラファエル前派の絵に行き着くのは必然だったのだと思います。

 ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
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iPhone・iPad画集『Waterhouse HD』

 武部さんが亡くなった後、僕は武部さんが担当していたファンタジー作品のシリーズの絵をいくつか受け継ぎましたが、その趣味を、そのままSFの世界に持ち込み再現したのが、パワードスーツやロボットなどの小道具なのでした。

 中身の制限があまり無いロボットと違って、人間が「着る」パワードスーツは、どこまでも人間の身体を守りながら且つなるべく自在に動くための機能や制約があり、過去にじっさいに使われてきた甲冑が参考になるわけで、それがここ一連のブログの連載に結びつきました。

 それはなにもイラストの世界だけでなく、同じように現実の軍事産業でも必要とされていますから、同じ発想で作られたそれらの製品は、イラストを描くときにも多いに参考になるのですね。

 ディスカバリー・チャンネルで見た「現代の甲冑」。ドラゴンの鱗の意匠を持つ防護服(胴部分以外はテキトーにアレンジしてあります)▼

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2011年10月 1日 (土)

アニメのメカ設定を「絵」ととらえたら

イゼルローン要塞の司令部をデザインした日 からのつづき
最初から読みたい方はこちら

 僕はアニメーターではないので、線だけでメカを描く(描写する)ことは殆どない。
 「メカ」はあくまで、イラストの中に描き込む素材であって、だから、絵に描く場合は、「向こう側」なんて考えないし(輪郭部分を描写するために少しだけ考えることはある)描いているうちにどんどん形が変わってしまう場合もしょっちゅうあるから、どうせ消えてしまうのだからと下書きすることもしない。でも、20代の最初。仕事を始めたばかりの頃は違っていた。

 『宇宙戦艦ヤマト』は、主に松本零士さんのデザイン画を仕上げる作業がが中心となった(いくつかの例外は、ヤマトの第三艦橋の中やガミラス戦車などだ)。なるべく松本さんの「描線」の雰囲気を残すようにしていたから、強弱を付け「味」のある線を心がけるようにしたが(とっても勉強になった)、僕が目指す仕事は、本の装画や挿絵だったから、鉛筆で描いた絵が公開されることは無くなっていった。

 そういうわけで、アニメ『銀河英雄伝説』のメカニックデザインは、僕にとっては、久しぶりでもあり、とても珍しい仕事となった。アニメになることが前提なので(ヤマトの仕事で、味のある線はかならずしも求められていないことを学んだから←線を仕上げるのは、原画や動画を担当する人たちの仕事)「線」は彼らの参考になればいいと、なるべく線の表情を消し去るようにした。曲面の表現も少なめの斜線だけ。だから画材には芯の太さ0.5ミリのシャープペンシルを使った。 仕上げた設定画はスタッフに配布するためにいったんコピーされ、線の「味」はここでほぼ消滅する(時にはアニメーターが書き直すこともある)。
 電子画集で公開する意味がここにある。高解像度のカラー画像で収録すれば、決して公開されることがなかった、当初の、幾分、無表情でもある線を、そのまま見てもらうことが可能になるのだ。

 収録ページ数に制限は無いから、さらにもう一つの要素を付け加えることにした。

 メカデザインの発注は、脚本が出来たタイミングで僕のところに来る。時にはそのあとで脚本が変更になり、いくつかのデザインは変更することになったりした。
 そんな一つが、ガイエスブルグ要塞の硬X線砲である。
 ガイエスブルグ要塞そのものののデザインはイッパツで決まったが、硬X線砲の形状や配備された位置はコロコロ変わることになった。
 没になった絵も含めて描かれた(考えた)時系列で画集内に並べることにより、どのようにデザインが変わっていったのか。その過程も、メカニックデザインなのだ。

 それが、設定画集アプリの最初の構成案。

 構成作業も三分の2くらいが終った頃、思いついたことがあった。
 ひと月前に発売されたiPhone・iPad『時空間画抄』『グイン・サーガ』画集では、過去の絵を、今の自分の技術で加筆したらどうなるかというテーマに挑戦することになった。
 では「銀英伝』ではどうだろう。
 当時の、線で描いたメカを、いま、面で描くとどうなるのだろう?
 その一部を紹介する。

(文章は書きかけ)

没になった硬X線砲のアイデア▼
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ワルキューレ パイロット ヘルメットのデザイン▼
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