« 『宇宙の戦士』トール文庫化のこと | トップページ | ダイナミックフィギュアの作り方4 »

2011年2月 1日 (火)

ダイナミックフィギュアの作り方3

0302s_2

●巨大ロボットのデザインを考える
 巨大ロボットを考えるとき、僕が思い浮かべるのは手塚治虫の『ガロン』だけど、最近の人はガンダム、エヴァンゲリオンかな。
 多くの人は、大きく開いた両脚をどっかり地面に据えた(地上に立った人間の視点からの)下から見上げた、巨大なぶっとい二本の脚、大きく横にせり出した肩のプロテクター、中央に大きく突き出した胸を持つ、アニメやゲームの世界の巨大ロボットを思い浮かべるでしょうが、ぼくはこれが苦手です。

 だから、『逆襲のシャア』のサントラのレコードジャケットを描いたとき、富野さんに「下半身は描きたくないので」「デザインそのものも四角いばかりで、描いててつまらないから、少し壊していいですか?」と許可を貰って絵を完成させた。

●巨大ロボットの足は小さくあらねばならない。
 以前から人型のロボット(パワードスーツでもいい)を考えたとき、一つのことを主張してきました。「人型ロボットの足は、小さくなければならない」。さもないと、一番の特徴である人型二本の脚で、走るどころか歩くこともままならないことになる。歩いたり、特に走ったりするときに左右の足がぶつかってしまうから。
 それを避けるためには、股や膝の関節を無理矢理、互いに避けるように円弧状に動かさねばならないし、それはとても非効率だし、パワードスーツの場合には中のひとの関節が耐えられません。
 自転車のポジションでも、ちょっとペダルの位置がずれてたり、膝の角度が曲がっていたら、関節に大きな負担がかかり、炎症を起こしたり、腱をいためたり、時には致命的な故障を起こしてしまう(自分で体験した)。

 パワードスーツじゃなく、ロボットなら人間のプロポーションを再現する必要は必ずしもないから、両脚の付け根の間隔を広げれば解決するだろうけど、それは人間のプロポーションとは大きくかけ離れ(『アバター』に登場するロボットのように)どたどた歩く爬虫類のバランスに近くなってしまう(速く走れば、逆に安定する)。
 特に、人間の動きをトレースするようなロボットなら(パワードスーツでもいい)、コンピューターが自動的に動きを補正すればいいと思われるかもしれないが、それでは、障害物の無い場所を歩いたり走ったりすることしか出来ない。
 僕だって、手足を家具にぶつけて悲鳴を上げることはしょっちゅうある。


 というわけで、『ダイナミックフィギュア』の仕事を引き受けたとき、(走ったり泳いだりするシーンがあるし)走ることができる脚を与えることにしたのです。

03df02s

●関節のこと
  現実に存在する大きなメカと言えば、工事現場で動くメカたちデス。
 特に長いアームを持ったメカの動きは鈍い。
 今の技術では、どんなに大きなトルクを備えたモーターでも、素早く動くことは不可能でしょう。
 そこで、ぼくは、走るときに関節などは動かさないで済む方式を考えた。
 素材そのものの反発を利用して、「跳ねる」脚。
 両脚を無くした人がカーボンの義足で記録に挑む、あの方式ですね。

 実はこれはとても昔からある考え方なのです。
 まだ自立二足歩行が実現する前の初期のロボットの中で、いちばん機敏に動いたのが、一本脚の「ホッピング」タイプでした。歩くのではなく、ぴょんぴょんと跳ねながら進んでいく。宙返りも思いのまま。
 ただし、メカそのものは、腰の横に固定されたアームで、ちょうど重心部分を支えていた。
 重心の移動が極限まで少なかったからこそ可能だったのデス。

●重心と反動
 日本刀を思い浮かべてください。フェンシングのそれとは違い、分厚い刀身はとても重く、これを素早く動かすためには、重心の移動を極限まで減らす必要があります。例えば、鞘から抜く時、刀身を引き出すのではなく鞘の側を後ろに落とす。刀を振り回す時は、重心を中心に、刃先と、(重心が点対称の位置にある)柄や腕のほうを動かすのデス。このとき、人と刀の合わさった重心の移動はとても滑らかなものになる。

 これは巨大ロボットでも同じだと考えました。
 パンチを打ち込むとき、その動きを打ち消す動作が必要となるだろう。そして、手刀を打ちおろすとき、その動きを打ち消すのは、二本の脚に支えられた胴体であり、そのすべてを引き受けるのは、地面となるが、これらを考えたとき、胴体の内部にジャイロがあると、動きで重心位置が大きく動かずに済むように四肢パーツが軽くても、相手にダメージを与えられる。
 ちょうどうまい具合に、今建設中のスカイツリーで使われているクレーンの映像も公開されましたね。強風の中でも回転しないクレーンのワイヤーに吊るされたメカは、「衝撃音」とともに、いきなり回転を止める。

●ちょっと脱線
 最近,テレビで『デスノート』を見ました。悲しいことに役者は、ハリウッド映画のように、拳銃を水平に持って撃ってました。このとき銃の反動を押さえ込むのは腕の重さだけであり、その腕は反動によって横方向に逸れるでしょう。拳銃の反動は、拳銃を持つ腕、それを支える肩、その肩を支えるのは、二本の脚がたっている地面なのデス。
 もっとも横になぎ払うように弾をバラ巻きたいのなら別だけど。

ダイナミックフィギュアの作り方4につづく

« 『宇宙の戦士』トール文庫化のこと | トップページ | ダイナミックフィギュアの作り方4 »

ダイナミックフィギュア」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/570938/50743241

この記事へのトラックバック一覧です: ダイナミックフィギュアの作り方3:

« 『宇宙の戦士』トール文庫化のこと | トップページ | ダイナミックフィギュアの作り方4 »